sai-zen-sen未曽有のコロナ禍の影響により、世の中の様々な分野でパラダイムシフトが起きています。メディアもその例に漏れず、プリントメディアからデジタルへのチェンジが劇的に加速しています。そもそもグローバルの視点で見た際に、日本は他の国とは一線を画し、唯一雑誌が非常に強い稀なマーケットで、まさにガラパゴス的な状況ではありましたが、このコロナ危機をきっかけについに大きな変化を迎えるのではないかと思います。 ランコムはこれまで化粧品業界の中でいち早くデジタルへの移行を行いましたが、極端にデジタルに寄り過ぎた弊害も生まれ、また急激に雑誌出稿に戻ったいち早いブランドでした。広告効果測定の調査では、雑誌広告がROI(費用対効果)が高いという結果が出ています。美しいビジュアルによるブランドイメージの構築はもちろん、製品の認知に関しても、雑誌が効率的であるという結論でした。特にその傾向はスキンケア製品を扱った広告で顕著に出ています。それは、日本がスキンケアの巨大マーケットであるという事情によるかと思います。 もちろん中国には売り上げは及びませんが、日本女性が化粧品に求めるレベルは他の国の追随を許さないほど高いものです。日本女性の美容感度は圧倒的に高く世界でも群を抜くほどで、とりわけスキンケア製品の最先端テクノロジーへのこだわりは、世界一といっても過言ではありません。 「自分に合った化粧品を選ぶために、正しい信頼できる情報を手に入れたい」「最新の製品情報を詳細まで知りたい」「自分の美しさの可能性はまout of boxだまだ極められる」、そんな声に応えて満を持して誕生したのが美容情報に特化した美容誌でした。 美容誌が誕生して20年程ですが、この間に美容誌と化粧品メーカーは互いに切磋琢磨し合い、化粧品市場をさらに大きく拡大させ発展させることができたのではないかと思います。その後押しをしてくれたのが、「美容ジャーナリスト」の存在ではないでしょうか。美容ジャーナリストたちによって厳しくジャッジされた化粧品は、プロのお墨付きという栄誉をいただき、〝信頼できる情報〟として消費者に説得力を持たせ購買に結び付きます。とりわけスキンケアのテクノロジーに強い美容ジャーナリストたちが活躍する美容誌という舞台で、日本の美容ジャーナリズムは発展し、化粧品メーカーもそれに応えるようにハイレベルな新製品を続々開発し成長していった。そのスパイラルが、美容誌への広告出稿を生み出していると思います。 しかしながらこのコロナ危機の中、消費者の購買のタッチポイントも実店舗からEコマースに大きくシフトしています。雑誌は雑誌の中だけに小さくとどまらず、Eコマースと直結する効率的なジャーニーを構築していく必要があります。また雑誌そのものもさらにブランディングを強化して、デジタルでグローバルな発信をして、付加価値を高めるチャレンジをしても良いのではないでしょうか?いずれにせよ2020年はこれまでの常識が覆り、世の中が大きく変わる年になるかと思いますので、雑誌に関わる一人一人がの発想で、これまでの自分の常識を打ち破ってみることが大切ではないかと思います。【インタビュー : 四方田 隆】日本ロレアル株式会社 ロレアル リュクス事業本部ランコム事業部 PR/メディア統括部長Vol. 294菊池 由美子氏雑誌が育てた日本の美容ジャーナリズム
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