クニュース」「メディア不信」「リテラシー格差」の三位一体構造が確認できる。これらは互いに強化し合い「負のスパイラル」を形成するため、日本の広告やメディア業界には、以下の変化への対応が求められる。 フェイク情報と隣接して掲載された広告、また、掲載先が把握できない広告には、ブランド価値を損なうリスクがある。そこで、掲載メディアを選ぶ必要がある。さらにAI広告の自動運用時代には「どこに掲載されるか」だけではなく「何の文脈で見られるか」が重要となり、文脈重視へのシフトが進むだろう。これに伴い、適切な文脈での広告表示を確保する技術やサービスへの需要が高まる。 アメリカでは、広告出稿先の選択が「価値観の表明」と見なされる傾向が強まっている。日本でも無意識の出稿が誤解を生み、SNSでの炎上リスクが増加中だ。グローバル展開する企業は出稿先メディアの立ち位置を事前精査し、自社の価値観との整合性を確認する必要がある。出稿基準は単なるリーチ数から「価値観の共有」「社会的責任」へとシフトしていくだろう。 日本では従来「政治的に中立、沈黙=安全」という前提があったが、この「無難」という立場自体が成立しにくくなっている。「何も言わない」ことが「現状支持」「無関心」と解釈される状況も生まれ、企業としては社会的なリスクになりかねない。今後は「中立性」の概念の再定義が求められるだろう。 ここまで分析してきた分断社会の現状を踏まえ、日本のメディアや広告関係者へ、自身の3つの立場から、提言を行う。①実業家の視点信頼は〝発信の一貫性〟から生まれる小規模企業ほど分断社会の影響を受けやすいなか、経営者の信念と一貫した価値観の発信が信頼獲得の鍵となると言える。広告予算が限られる状況では、「どこに出すか」より「何を伝えるか」の設計力が重要となる。企業の核となる価値観を全コミュニケーションに反映し、トレンドに振り回されない長期的視点で顧客との信頼関係を築くべきである。②戦略コンサルタントの視点広告は「経営的意思決定の延長」へ広告出稿はマーケティング部門だけでなく、企業の社会的立場を表明する経営戦略となっている。 とくに海外市場では、メディア選択そのものが価値観の代理表明となる。このパラダイムシフトに対応するには、経営レベルでの「広告出稿ポリシー」策定が不可欠である。部門横断的な意思決定プロセスを確立し、一貫した企業価値を伝えるべきであると考える。③親としての視点分断を超える次世代の情報環境を デジタルネイティブ世代は広告と情報の境界が曖昧な環境で育ち、分断された情報生態系の中で価値観を形成している。子供にとって広告は「社会的価値観の教材」であり、その影響力は大きい。子供向けコンテンツ隣接の広告への倫理的配慮と多様性、包括性の表現は、企業の責任である。メディアリテラシー向上支援と世代間対話を促すコンテンツ開発も重要だ。 本稿で検証してきたように、アメリカに端を発した情報環境の分断は、日本にも確実に波及している。この状況下で、雑誌広告業界には単なる販促手段を超えた「社会との信頼接点」としての新たな役割が求められている。SNSのアルゴリズムによる分断とは異なり、雑誌及びウェブも含めた雑誌系のトータルメディアには、「編集文脈」「情報設計」分断から共感へ雑誌広告が築く新たな社会的価値提言〜日本のメディア、広告関係者に求められる視点〜広告出稿=企業姿勢としての認識拡大ブランドセーフティと文脈重視の加速「中立性」の再定義6
元のページ ../index.html#6