一方で、オフラインにおいては競合に比べて弱いという課題があった。とはいえ、自社で店舗を構えるには多大な投資とリスクを伴う。そこで、2024年12月2日付で完全子会社化された、業界最多の店舗数を誇るドラッグストア大手のマツキヨココカラ&カンパニーグループへ参画した。 「弊社が持つLIPSユーザーのデジタル情報と、マツキヨココカラの店舗・顧客情報を掛け合わせることで、お互いが支援しきれていなかった部分を補えると考えました。LIPSユーザーはもちろん消費者、メーカーやブランドにとっても、大きなメリットが期待できます」(有江氏) まずは年2回実施していが直接つながる場をつくりました。 美容に関心を持つアーリーアダプターは、新しい商品に対する好奇心が強く、商品の理解を深めるためにメーカー担当者の話に熱心に耳を傾け、高度な質問を投げることも多いのです。 また、こうしたイベントでは商品を配布しても、その後の反応が少ないケースがあるそうですが、LIPSユーザーは熱心に投稿いただくのが特徴です。イベント後に売り上げが伸びたという声もいただいています」(有江氏) オンラインを通じてユーザーとの接点を築いてきた同等の情報量でクチコミを発信しており、発売時などの話題づくりにひと役買うだけでなく、蓄積されたクチコミが数年後でも検索で見つかる点も好評だという。2023年10月には「LI PS Production」を立ち上げ、投稿を続けてきたユーザーを中心に組織化。現在は26名の専属クリエイターが所属している。ブランドとのコラボ商品を共同開発するなど、新たな取り組みも始まった。 近年注目を集めているのが、リアルイベントの開催だ。2024年1月からスタートし、年3回ペースで実施している。デジタル×実店舗で施策の精度向上へる「LIPSベストコスメ」の受賞ロゴを店舗に設置。今年6月にはマツキヨ2店舗で、ベストコスメを受賞した商品だけを集めた期間限定の企画棚を展開した。 「店舗に受賞商品が並ぶことで、ユーザーは商品を手に取りやすくなりました。また、LIPSのお墨付きが伝わることで、一般消費者も数ある商品の中から選びやすくなったとのお声もいただきました」(有江氏) また、両社が保有するユーザーIDの統合も始まった。これにより、LIPSで情報に接触したユーザーが、実際にマツキヨやココカラファインの店舗でどんな商品を購入したのかという、オンラインとオフラインを横断した消費者行動の可視化が可能になった。たとえば、新商品の認知から購買までの流れを一気通貫で把握し、ユーザーの購買行動を分析したり、特定の投稿を見たユーザーがどれくらいの確率で来店・購入に至ったのかを測定することもできる。逆に店舗で売りたいアイテムをLIPS上で強くり込む人も珍しくないという。全色ラインナップや、細かく手順を解説したハウツー、使用感の比較など、痒いところに手が届く投稿がずらりと並ぶ。ユーザー目線の情報は閲覧者の興味を引くだけでなく、出広にもつながっている。 人気の広告メニューのひとつが「サンプリング」施策だ。応募者の中から抽選で選ばれた人に製品を提供するという仕組みで、クチコミの投稿は本人の意思に委ねられる。それでも当選者の多くが、通常の投稿と美容関心層の発信力で広告主の課題を解決月間アクティブユーザーは約1000万人、累計投稿数は500万件を超える『LIPS』。AIを活用し、同社が保有する約390万件以上の投稿や商品データ(2023年4月末時点)からユーザーの質問に回答する機能もリアルイベントは年に3回開催。直接商品の説明や魅力の訴求ができ、かつ熱量の高いクチコミ投稿が寄せられた。画像は2025年1月に実施した際のもの 「美容系のアイテムは、規制のある広告の中では、処方などすべての情報を伝えるのが難しいのが実情です。そこでLIPSのユーザーとメーカーやブランド5
元のページ ../index.html#5