雑誌広告2025_10
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CASE 創業者のブルネロ・クチネリは、独自の「人間主義的経営」を掲げています。働く人やその家族、地域社会に暮らす人々の尊厳と幸福を中心に据え、その結果として健全な利益が生まれる、という考え方です。プラトンのアナムネシスなど、哲学的思想を常にコレクションのテーマとして取り入れ、人間らしさとは何かを問い続け、ファッションを通じてそのメッセージを世界に発信してきました。 しかし、プロダクト自体はビジュアルを見せることができますが、そこに込めた背景や思想、さらにはブランドの哲学までを伝えるのは容易ではありません。ブランドが自力で届けられる情報にはどうしても限界があります。そこで、その不足を補う役割を担っているのが、雑誌のタイアップ広告など、メディアが作るコンテンツなのです。 第三者が制作するコンテンツはわかりやすく、かつ客観性をもって紹介されます。そのため、外部への発信に有効であるのはもちろん、社内資料としても役立ちます。例えば、新しいスタッフにすべて個別でブルネロの思想を説明するのは時間も手間も要しますが、記事を共有することで、共通の理解を素早く浸透させることができます。さらに、いつでも読み返せるので記憶のように曖昧になることもなく、価値観を継承するツールにもなります。 だからこそ、雑誌にタイアップ広告を出す際には、私たちの目的やブランドの価値観を丁寧にお伝えし、メディアの方々としっかり理解を共有することを大切にしています。思いを込めてお話しすることで、その熱量が記事に映し出され、最終的には読者の共感や理解につながるのではないかと考えているからです。 インタビュー形式であればメッセージは比較的伝わりやすいのですが、そうではない場合でも、ブランドの根幹にあるメッセージを組み込むことが欠かせません。例えば英国調をテーマに取り入れたとき、その背景には英国=カントリーライフ、すなわちジャン□ジャック・ルソーの自然観がありました。単に今年のトレンドとして紹介するのではなく、私たちとしては、なぜその要素を取り入れたのか、という背景まで踏み込んでほしいのでplusブルネロ クチネリ ジャパン株式会社コミュニケーション部 PRマネージャー文 /中木 純2遠藤 さくら氏す。表面的な説明だけでは、たとえその瞬間は読者の心に響いても、一過性のブームで終わってしまうでしょう。 こうしたタイアップ広告も、時代背景やユーザーの行動変容に合わせ、約 5 年前からプリントメディアからデジタルメディアへも広げてきました。今もプリントメディアに出広していますが、必ずデジタル媒体へ転載しています。 創業者は人と人のコミュニケーションを大切にしているため、当初はデジタルの活用に慎重でした。しかし今では、それを産業革命に匹敵する、文明を前進させるための重要な道具と捉えています。要は使い方です。よいコンテンツをより広く、そして丁寧に届けるためには、デジタルの力は欠かせません。そこで「デジタルの世界にもヒューマニズムを」という合言葉のもと、Webサイトのリニューアルや社内AIの開発など、積極的な取り組みを進めています。 “ヒューマニズム”を実現するうえで私たちが重視しているのは、違和感のなさです。例えば、サイト閲覧中にポップアップ広告が視界を遮っていないか、ブランドの自己主張だけが先走っていないか。便利だから導入するのではなく、その理由を必ず確かめ、人に寄り添っているかどうか、最後にもう一度確認します。こうした慎重な姿勢がブランドの信頼を支えると信じています。 プリントであれデジタルであれ、私たちがファッションを通じて伝えたいメッセージの本質は変わりません。これからもメディアの力を借りながら、人間の根本的な価値を問い直し、発信し続けていきたいと考えています。36ブランドの思いまで、メディアの力で届ける最前線最前線最前線最前線最前線 +++++

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