CASE②ちょっと素敵で役に立つことをエディターの主観を入れてリレー形式で毎日発信集英社 Web版『SPUR』スモールグッドシングス2021年頃からインスタライブ、そしてコロナ禍明けからは動画を使ったタイアップ企画の受注が急増した。三好氏へのタイアップ動画出演や、編集部員への依頼も年々増えている。 「私は読者に近い立ち位置で話す役割。技術の進化や成分などを解説する美容業界のプロの方の知見を、読者にわかりやすく伝える橋渡しとして重宝されているのかもしれません。座談会の動画も人気です。私はモデルやヘアメイクだけでは伝え切れないメーカーの思いを、読者に寄り添う形で言語化しています」(三好氏) この秋には2年ぶりに『VOCE白書』を公開予定。読者約1500人を対象にアンケート調査し、情報感度や購買意欲など美容好きの実態を深掘りするものだ。今年はコスメの購買行動にフォーカスしているという。 「〝#PR〟についても調べたところ、誰がどんな視点で発信しているか、寄り添っているかが伝われば、広告案件でもしっかり見てもらえることがわかりました」(三好氏) 現在はInstagramリールなどの短尺動画の発注が増加傾向にあり、出演は後輩の若手編集部員に任せることも増えている。 「トークショーなどにひとりで登壇できる部員も増え、経験を重ねて頼もしくなってきました。30代前後の読者と近い世代が活躍してくれています」(三好氏) 顔を出す以上、発信にはある種のリスクも伴う。そこで演者になる部員には、家の場所を特定されるような写真を避ける、他人が不快に感じる言葉を使わないことを徹底させ、ネガティブコメントに対するメンタルケアも怠らない。 三好氏は「美容誌はイメージを伝えるだけでなく、実用誌のような存在」と語る。たとえばアイシャドウを見ても、メイク後の自分を想像するのは難しい。肌の色や塗り方によって見え方は異なるからだ。スキンケアも、肌質やアイテムの組み合わせによって使用感や効果は人それぞれである。 「肌のきれいなモデルのメイクはお手本になります。それと併せて、私たちいろんなタイプの編集者がリアルに抱える肌悩みのコンプレックスを見せながら紹介することで、読者に寄り添いながら、問題解決する姿勢が伝わっているのではないでしょうか。それが編集者発信のコンテンツが受け入れられている理由と考えます」(三好氏)画に当てはまらないこぼれ落ちるものの中にも、読者に役立つ情報がたくさんあるのではないかと考えたのが始まりです。 コラム名はアメリカの作家、レイモンド・カーヴァー氏の短編作品『A Small, Good Thing』を、村上春樹氏が〝ささやかだけれど、役にたつこと〟と訳していることにインスピレーションを受けました」 と、この企画を立ち上げた当時の編集長であり、現在はSPURブランド統括編集長を務める五十嵐真奈氏。 記事のジャンルはファッションに限らず、ビューティ、旅、本、食など、エディターが誰かに教えたいと思うことであれば、自由に 雑誌『SPUR』のエディターが日常で見つけた、ちょっと素敵で役に立つお気に入りを紹介する人気コラム『スモールグッドシングス』。Web版『SPUR』で連載中だ。 「普段の取材や制作活動ですくい上げる中で、誌面に載せきれない、あるいは企* * *早く紹介できるという速報性が強みのひとつだったが、インフルエンサーが編集者と同様に製品発表会に呼ばれるようになり、その優位性は薄れてきた。 「時代の変化に合わせて、編集者だからこそできることや考えられる切り口を、つねにアップデートし続けなくてはなりません。私たちメディアの強みは、まず信頼感。それに加え、積み重ねてきたブランドや製品の歴史、発表会やリリース以上の情報を研究員への取材などで深掘りする力です。そして一番大切なのは、読者が本当に知りたいことに応えること。読者ファーストが、私たちの基本です」(三好氏)読者に寄り添って実用的な情報を届ける美容のプロと読者をつなぐ身近な存在として活動7月に東京で行われた「ラ ロッシュ ポゼ」のブランド創立50周年記念の特別イベントに登壇。パリで行われた同イベントではゲリラインスタライブを開催した4
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