ある飲料メーカーによる「AIの戦略的活用」事例は、AIが単なる効率化ツールではなく、クリエイティブのパラダイムシフトを起こす可能性を示唆していた。このメーカーはAI活用により、5人の専門家がわずか30日間で7万パターンの動画を制作。例年の同キャンペーンにかけていた制作費と時間を60%削減したという。テクノロジーを恐れずにマーケティングやクリエイティブに活用することで新しい価値が生まれたり、ビジネスに革命が起き、それを業界団体が支援し、倫理や法規制を整備していくスピードを感じた。 全米広告主協会(ANA)では、広告主、広告代理店、メディア、テック企業で構成するエコシステム全体での成長の鍵や最新トレンド、課題を聞いた。現状、広告主が効率性の観点からデジタル領域へ予算を傾斜させることで、相対的にマーケティング地位が低下し、ブランドの長期的価値が毀損される等、メディアの収益性と信頼性が揺らいでいるという。そのため「成長を創出するマーケティング機能の再設計」が必要であり、鍵として「AIの戦略的活用」「人材・組織のアップデート」「測定基準の高度化や知識の共有」を挙げた。 テクノロジーを積極活用する一方、「AIが及ぼすインパクトは不確かで、倫理的リスクに対する厳格な基準の適用が急務」とも話す。メディアサプライチェーンの透明性、安全性、誠実性の不安定さが消費者・企業・メディアの三者間に不信を生んでいるとし、プログラマティック広告の構造解明、新興メディアやクリエイターエコノミーを含む測定基準の整備、データプライバシー保護は解決すべき喫緊の課題だという。メディアプランニングや広告配信でのカーボンフットプリント計測の取り組みなどには時代の波を感じた。 広告主から戦略設計やクリエイティブ、データ活用まで統合的な支援を求められる中、「透明性や信頼は〝最大の資産〟である」という言葉が印象的だった。メディアの環境が激しく変化する中で、編集力、IP、信頼性といった雑誌メディアの資産を再構成し、広告主に対して新しい価値を提供し続けることの重要性を改めて感じた。マーケティング領域におけるテクノロジー活用の可能性と課題とは惠良能夫(光文社)小池香野子(博報堂)末光次郎(小学館メディアプロモーション)Association of National Advertisers(全米広告主協会) 感謝祭が迫り、クリスマスマーケットも街を彩り始めた11月のNY。観光名所でもあるニューヨーク公共図書館では、雑誌「The New Yorker」100周年を記念した特別展を開催していた。ユーモアと風刺を込めた名物のイラスト表紙は、世相を反映しつつアートとしても確立されており、雑誌というものが単なる情報の域を超えて文化的価値を生み、100年にわたって街の生活に寄り添ってきた歴史を肌で感じることのできる企画だった。 その足で続いて訪れたのは、米国を代表する書店チェーン「Barnes&Noble」。日本の書店と変わらず厳しい環境のなかで、カフェやイベントスペースを標準設備とし、地域コミュニティの中心としての書店に活路を見出しているという。この日もイベントが開催されていた。米国では、独立系を含めると書店数自体は直近5年で約1.7倍まで増えたとのレポートもあり、大型書店が厳しくなる一方で、まだまだ書店は人々の生活の一部になりうるようだ。 ちなみに訪問した書店のイベントスペース横には大型棚4列を使って日本の漫画が。立読みができるため人々が思い思いの姿勢で読み耽る姿は、ひと昔前の日本の書店の姿とも重なった。末光次郎(小学館メディアプロモーション)大塚順子(マガジンハウス)出版物が創るニューヨークカルチャーマーケティングの進化について語るNicholas Primola執行副社長チャネル進化と測定について語るJason Trubowitz上級副社長ANAの活動について語るJulie Weitzner上級副社長書店や図書館が時代の変化に合わせて様々な戦略を駆使し、文化を楽しめる場となっている7
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