カナダ観光局はかねてより日本からの観光客誘致のため、潜在顧客に向け、カナダの認知度を上げる取り組みをしてまいりました。しかし、2020年にコロナ禍で海外渡航が完全にストップしたことにより、変化に対応する必要に迫られたのです。それはこれまでのターゲットやPRの方針を見直すことにつながりました。 そこで、海外旅行が再開したばかりの頃は、ターゲットを潜在顧客という漠然としたものからビジネスリーダーなどの優良顧客へとシフトしました。知的好奇心が高く旅慣れており、周りにカナダの良さを伝えてくれるような、影響力のある人という明確なイメージです。 コロナ禍が落ち着き、海外旅行は回復しつつあるものの、円安や物価高が進んだことも重なり、とくに欧米などの遠方へは誰もが気軽に旅行できる状況ではなくなりました。当然、カナダに限らず、競合する他国の観光局においても観光客誘致の戦略を練り直しており、ターゲット層も近かったと思います。そのような状況の中で、どのように差別化していくかが大きな課題でした。 ちょうどメディアとのタイアップを考えていた時に、『CREA Traveller』などへの出広でお付き合いのあった文藝春秋さんから、月刊『文藝春秋』と動画メディア『文藝春秋PLUS』による連動展開のご提案をいただいたのです。会社の経営者や政財界のオピニオンリーダー等を読者に持つ『文藝春秋』はまさにアピールしたい層でしたし、動画は雑誌とはまた異なる層の視聴者が観ていることから、広くかつ立体的なアプローチができると考えました。 出広は2回の予定とし、出演者として脳科学者の茂木健一郎さんをご紹介いただきました。茂木さんは15歳で初めて訪れた海外がカナダで、生き方が変わった特別な場所であるとおっしゃっています。また、著書『生きがい』に書かれている価値観からもカナダを発信してほしいという思いで、ぜひお願いしたいと依頼しました。スケジュールのCASEplusインタビュー: 中木 純2カナダ観光局 日本地区代表半藤 将代氏都合上現地取材は叶わなかったのですが、カナダにゆかりの深い方との対談企画となりました。 対談の1回目がカナダへ留学中のタレントの光浦靖子さん、2回目が『赤毛のアン』の翻訳者、村岡花子さんの孫で作家の村岡恵理さんです。茂木さんがゲストの話を次々と引き出してくださり、とても面白い対談となりました。1回目は動画配信後、わずか1か月で再生回数が10万回以上に。2025年3月現在では15万回を超えています。期待を大きく上回る反響でした。 その後、茂木さんのスケジュールを確保していただいたことから、現地取材による3回目、4回目の企画が実現。カルガリー編、カナディアン・ロッキー編の2本分を1週間でまとめて撮影しました。対談を含め、1年間で計4回実施した動画タイアップの累計再生回数は30万回を超えております。 カナダが持つ特別な魅力、それは比類のないオープンさです。広大な自然、人々の温もり、多様性、包容力のある社会、イノベーションが生まれる土壌など。すべてをありのままに受け入れてくれる心地よさがあります。それは閉塞感漂うこの世の中だからこそ、私たちが一層必要とするものではないでしょうか。 観光客誘致のためのPRですが、単なる観光地案内ではなく、そうしたカナダを旅することの価値を伝えたいと模索してきました。そこまで表現することは簡単ではありませんが、雑誌と動画の2つのメディアによって、立体的かつ重層的に伝えることができたと思います。カナダの本質的な魅力を深くご理解くださっている茂木さんのキャスティング、対談企画といった編集者の視点を入れた構成も重要な成功要因となりました。30誌面と動画でカナダの本質的な魅力をPR最前線最前線最前線最前線最前線+++++
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