雑誌メディアの挑戦─広告効果測定の現在地PDCAを回せるメディアへ出版社、そして雑誌ブランドが企業のマーケティングパートナーとして進化するために、乗り越えなければならない「課題」がある。それが効果測定だ。広告主視点で捉えれば、それは費用対効果の可視化となる。たとえば、雑誌は立ち読みや回し読みもされるため、リーチ数を正確に把握することは困難だ。加えて、デジタル領域においては、雑誌由来のデジタルメディア、雑誌の公式SNSアカウントへの広告掲載効果とはどのようなものなのか。雑誌ブランドはいま、PDCAを回せるメディアへ進化するべく効果の可視化に挑んでいる。その一部を紹介しよう。取材・文/赤坂匡介 雑誌広告は、認知と購買をつなぐ、「ミドルファネル」(興味喚起・理解促進)に強みを発揮すると言われる。その理由はシンプルだ。出版社の生み出す良質なコンテンツが、読者に「共感」を与えるからだ。そうした効果を可視化すべく、2 01 3年からスタートしたのが「雑誌広告効果測定調査M-VALUE」だ。近年はその対象を「デジタル」に変更し、「M-VALUE DIGITAL(デジタル広告効果測定調査)」として、調査を実施。2023年には第1回の調査結果も公表された。 「調査対象をデジタルにしたのは、雑誌の持つブランド力が、デジタル版においても継承されているかを検証するためです。その結果、デジタル版においても、信頼性や専門性を有するという雑誌の持つ優位性が認識されており、雑誌同様、ミドルファネルとの相性がよめる傾向が強いことがわかりました」 一般Webメディアを訪れるユーザーは、検索での流入も多く、サイトに時短となる「答え」を求めているような印象を受ける。一方で出版社Webメディアを訪れるユーザーは、共感できる「情報」探しを楽しんでいる印象だ。 「ユーザーのニーズの違いは、広告接触後の心理変容に大きな違いを及ぼしていました。一般Webメディアで広告に接触したユーザーは、〝口コミサイトを見たい〟がトップ。一方で、出版社Webメディアで広告に接触したユーザーのトップは、〝お試しをしてみたいと思った〟でした」 出版社Webメディアで広告に接触したユーザーたちには、美容専門誌の紙と同じ世界観で掲載されている情報は、たとえ広告であっても、信頼感や安心感をもって伝わっていることが、「お試し」につながっていると考えられる。 「出版社Webメディアで広告に接触したユーザーが、『誰かの感想を知りたい』ではなく、『自分で使って確かめてみたい』と思うというのは、非常に大きな違い、特徴が表れた部分でした。雑誌でページをめくって生まれる、情報との偶然の出会い(セレンディピティ)の創出が、Webメディアにも継承されているようで、個人的にとてもうれしく思いました」 サイト訪問によるセレンいことがわかりました」と、同ワーキンググループのメンバーを務める集英社アーツ&デジタル取締役(取材時□集英社メディアビジネス部部長)古賀路氏は語る。 第1回の調査は、一般Webメディアと出版社Webメディアの記事広告(美容・コスメ関連)に接触したユーザーを対象にしたアンケート調査によって実施された。 「そのなかで、一般Webメディアには、『実用性』および『時短』を求める傾向が強く、出版社Webメディアには、内容を楽しむ『趣味性』および『共感』を求信頼と共感が生み出す、心理変容第1回「M-VALUE DIGITAL」調査結果の一部。出版社Webメディアで広告接触したユーザーは、得た知識を実感したいと考え、「お試し」を求める傾向が強い集英社アーツ&デジタル取締役(取材時:集英社メディアビジネス部 部長)古賀 路氏一般Webメディアと比較し、出版社Webメディアの広告効果を検証□M-VALUE DIGITAL□(デジタル広告効果測定調査)CASE13
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