雑誌広告2025_06
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いただいています。ファッション誌だといわゆる番宣的なインタビューをして終わりというものもあるなかで、『大人のおしゃれ手帖』は普段の暮らしについて深く取材をさせていただいているために、どういったことに興味があるのか、今後どういったことをしたいのかなど、パーソナルな部分を感じ取ることができます。こういった企画であれば、面白がってやってくれるんじゃないかと企画にフィットする人選をクライアントに提案できるというのは私たちの強みです」YSACCSとのコラボレーション企画で重視しているのが「ものづくりを楽しんでくれる人」であるかどうかだ。 「みなさん『またこういう企画があったらぜひ声をかけてください』と言ってくださるほど仕事ではなく、ものづくりとして、この企画を本当に楽しんでくれています。また、クライアントであるYSACCSさんも出演者の意見に耳を傾け、真摯に向き合ってくださっているので、雑誌のタイアップという枠を超え、お互いにいいものをつくろうという思いがしっかりと形になっている。それがこの企画が好評を得ている理由だと思っています」 企画の意図を深く理解し、制作に前向きに向き合える人物を起用することで、読者の信頼を損なわず、企業、そして読者にとっても価値がある広告が生まれている。 「広告企画だからといって、『大人のおしゃれ手帖』の世界観から大きく乖離すると、読者は離れてしまいます。その点この企画の場合、YSACCSは付録のコラボブランドとして採用したこともある、読者と親和性のあるブランドです。そこに読者の憧れのミューズ的な存在の方が一からつくりあげたものという要素が加わることで、読者にとってはより興味を惹かれるものとなっています」 『大人のおしゃれ手帖』という雑誌を中心に読者・企業・出演者、それぞれに大きなメリットを生み出す、新しいタイアップの形がここにある。 出版社には、長年積み重ねてきた〝編集知〟がある。それを広告に活かせば、情報の〝伝達〟ではなく、新しい価値観の創出が可能になる。苦戦が続く雑誌広告だが、「編集部とクライアントを含めた広告分野と二人三脚で取り組むことで新しい突破口が生まれるはず」と橘編集長は言う。YSACCSとの取り組みは、まさにその好例である。 「編集部としての仕事だけをしていたらこの企画は生まれなかったと思います。編集と広告両者ができることを結び付けたことで、新しいスタイルの広告企画をつくることができた。編集部が持っているノウハウを活かしながら、こういった新しい企画を生み出していくことがこれからの雑誌広告には必要なのではないでしょうか」新たな価値を生み出す新しい広告スタイル出版社の財産が未来を拓く 日経BPの「日経BPインサイト」は、過去の編集資産を再編集・再配信することで、法人顧客向けの新たな収益モデルを確立した。専門性の高い既存コンテンツに新たな文脈を与え、〝知のプラットフォーム〟へと再定義した点に、従来の出版社にはなかった発想がある。 一方、宝島社『大人のおしゃれ手帖』のように、タレントと共に商品開発から関わる広告企画は、新しいタイアップのスタイルを生み出した事例として大いに参考になることだろう。 これからの出版社に求められるのは、「情報提供者」ではなく、これまでに蓄積したノウハウ、コンテンツを活用して新しいものを生み出す「編集者」としての視点なのかもしれない。再定義された〝編集〟が、これからの出版業界の未来を変えていく。日経BP・宝島社の取り組みから考える未来7

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