雑誌広告2025_11
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東京藝術大学学長特命審査委員長/クリエイティブディレクター/美術学部デザイン科教授箭内道彦氏雑誌にしか成し得ぬセグメントだからこそ光り輝く雑誌広告読者が雑誌を選ぶように、雑誌も読者を選んでいます。そのセグメントは、インターネットが形成する捕獲型のコミュニティとは一線を画す、真似のできない在り方です。綴じられた雑誌は、いい意味で閉じられた場所。広告主は、その雑誌に出稿することの意味と意義を強く認識しながら、楽園のように幸せな空間に顧客と共存しています。雑誌の側も、ターゲティングと媒体料で広告主をふるいにかけながら、非常に純度の高いコミュニティをそこに発生させている。そのことを改めて感じる審査でした。「よりたくさんの人に届けたい」「みんなに見てほしい」……そのために目先のインパクトを求め、エッジを研ぎ合う表現の競争は、前時代の遺物であるのかもしれません。広げるだけではない手渡しの共有が今、広告の世界にも必要とされています。ざわざわと騒がしい現在の社会だからこそ際立つ存在。雑誌が、雑誌広告が、これからも輝き続け、この世界の役に立ち続けるべき大きな理由がそこにある。今年は特にそんな印象を受けました。審査会のテーブルには、雑誌の現物も並べられています。ページを開いた広告の対向面に編集がどんな記事をデザインしているのかを確認することができました。そのツーショットに、編集と広告が互いをリスペクトし合い、調和をしながら共に進化していこうとする姿勢を感じる場面が複数ありました。37

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