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Training Program研修のご案内

研修のご案内

雑誌メディアは他マス媒体と異なり、海外広告主や海外提携雑誌も多くあります。世界各国には様々な雑誌があり、雑誌そのものの販売方法や雑誌広告の役割も異なっています。当協会では毎年「海外研修団」を派遣し、雑誌広告に携わる会員の皆様の視野の拡大、会員間での課題発見や情報交換、懇親の場としての研修を行なっております。

「2024年海外研修団レポート」(2025年会報1月号掲載より)

“Insights from New York”
~変化の時代におけるメディアの未来~変化の時代におけるメディアの未来
団長 赤塚武継(ザ・ゴール)

2024年10月、我々研修団が降り立ったのは、秋に色づき始めたニューヨークの街でした。研修団としては7年振りのニューヨーク。日本では衆議院選挙の開票前日であり、アメリカでは大統領選が大詰めと、日米とも大きな変化のタイミングで訪れることとなりました。
話を聞くことができたのは、ジャーナリスト、インターネット協議会、広告会社、テレビ関連と幅広く、日本の出版業界全体を改めて考えさせられる多くの「気づき」を得る機会となりました。益々盛り上がるIPとしての「MANGA」の価値、グローバルメディアとしての絶え間ない「Challenge」、雑誌メディアの評価は「People Based」が鍵になる…等。アメリカのメディア環境における雑誌は、プリントメディアではなく、プラットフォームとしてどう進化させていくか「Out of Box(型を破る)」が重要で、それがなければ成長はないことを感じました。デジタルツールやAIの活用は当然の手段であり、使いながらチューニングしていくスピード感も印象的でした。
一方、SOHOで開催していたKODANSHA HOUSEで『進撃の巨人』『AKIRA』に並ぶ人たち、Barnes & Nobleに広がるコミックコーナー、平積みされる『POPEYE』。感度の高い人が集まる街ブルックリンでは、日本雑誌のバックナンバーや日本の出汁、お茶を多くの人が手に取るのを見て、嬉しくなることもありました。
日米とも選挙では多様性と若者の取り込みが大きな変化の鍵でした。日本の雑誌、出版、広告業界も止まっていてはいけません。良さを活かしながら、変化を受け入れ、チャレンジし、どうしたらオーディエンスに選ばれるのか。そして何より「気づき」を素早くアクションできるのか。そう問われていると感じた研修でした。研修団レポートが、みなさんの「気づき」になることを期待しています。

講演 国際ジャーナリスト 津山恵子氏
あらゆるメディアの主戦場がデジタルへ 今こそ求められるOUT OF BOXの発想
中目優希(小学館)清田恵美子(集英社)写真/伊与田江美(文藝春秋)

日本雑誌広告協会の研修団としてニューヨークに渡った我々であったが、研修全体を通して「雑誌広告」のみを焦点とする話題は実際のところかなり限られた。米国では、それほどまでにメディアジャンルの垣根が無くなっており、テレビ、新聞、そして雑誌を出自とするメディアが同じマーケットで鎬を削っている。
こうした状況下で生き残ってきたのは、既存のビジネスモデルを超えた発想を実現してきた企業たちだ。ジャーナリストの津山恵子氏は話す。

購読者が〝10倍〞のニューヨーク・タイムズ
「アメリカの新聞と言えば低価格での駅売りが中心で、ビジネスモデルとしては広告収入と購読収入の比率が7:3でした。それが現在ではデジタル購読者の増加によって購読料中心のモデルに逆転してきています」
アメリカ三大紙のひとつニューヨーク・タイムズは2011年、月15ドルでWeb+携帯電話での購読パッケージの課金システムをスタート。社内での反対の声をよそに年々売上を拡大し、現在では総購読者数1000万を誇っている。デジタルパッケージ導入前の本紙部数が最盛期で約120万部だったことを考えるとおよそ10倍の規模だ。

転換期を迎えたデジタルネイティブメデイア
新聞・雑誌メディアを駆逐し得る存在と喧伝されたオンラインを主戦場とするメディアもまた2010年代の急成長の後、岐路に立たされた。2023年バズフィードは赤字のニュース部門を閉鎖しハフポストに統合。動画で伸びたヴァイスメディアも広告収入の減少で連邦破産法を申請した。
そんな中、新たなビジネスモデルで台頭しているデジタルネイティブ第2世代と言われるメディアがある。「POLITICOという政治情報を発信するメディアは、その専門性の高さと網羅性を武器に購読者を増やし、ニーズの高まりから紙メディアを出すようになりました。議員秘書のレクチャーなどにも活用されていて、その際に重要点にマーカーを引いて渡すなどの需要が大きかったのです」
そして同じく第2世代に位置付けられるのが、AXIOSだ。スマホやタブレットでも読みやすい簡潔な箇条書きを取り入れるなど独自の記事スタイル、短時間で情報が理解しやい点が支持されている。
「また、記者向けに作成したシステムが、レポート作成やプレゼンテーションといったビジネス場面でも役立つことに商機を見出し、ライティングツールのソフトウェア販売でも成功を収めています」

試行錯誤を繰り返すコンテンツ制作でのAI活用
ここ数年で爆発的な躍進を遂げているAI技術の受け止められ方については、「人間の記者がAI記者にくわれてしまう、という心配はあまりされていません。基本的にはポジティブにチャレンジをしていこうという考え方が多い印象です」
AXIOSでは大統領候補の演説から頻出フレーズを抽出する作業にChatGPTを活用。人の手では長時間かつ多数の労力がかかる場面での使用が始まっている。「AP通信でも、翻訳、自動要約、見出しの作成などでAIを活用しています。正確さ、公正さ、早さで強みを持つ生成AIの活用の場面はこうした場で広がっていくと思われます」

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多面的にボーダーレス化が進む中、生き残りをかけあらゆる発想・手法でマネタイズを図る米メディア。私たちもまた、既存の枠を超える取り組みに日々向き合って行かねばなるまい。

Dentsu Americas
雑誌業界に求められる新たなフレームワーク メジャーメントの重要性
松岡英樹(第一通信社)森川裕康(博報堂DYメディアパートナーズ)

マルチタッチアトリビューションを広告主に求められるアメリカのエージェンシー。そのためにはメジャーメントと個人情報の取得が欠かせない。電通のグローバルネットワークであるMerkleは、元DM会社として個人情報データを保有しており、外部のマーケットプレイスデータを統合することで、アメリカ世帯の95%以上、18歳以上の男女に関しては2・7億人の個人情報を保有している。Dentsu AmericasのKonishi氏、Naito氏に、広告の現状と雑誌業界が今後取り組むべきことを聞いた。

アメリカにおける雑誌メディアの市場環境
総広告費の2028年までの成長率予測は年率6~9%で、アメリカのGDP成長率が3・9%と考えると、非常に高いものである。
総広告費におけるデジタルの割合は、2024年時点で総広告費の75%を超えており、2028年には限りなく90%に近づく予測。
一方で雑誌広告費の成長率は、2028年まで年2%ずつの減少と予想されており、総広告費が年8%成長すると仮定すると、その差は10%ほどの開きとなる想定で、非常に厳しい状況と言える。デジタルマガジンのみに絞ってみると、対前年減少には至っていないものの、最終的には伸び率は鈍化すると予想される。雑誌における広告費と時間占有率を相対的に見た場合、見られている時間自体は多くはないが、時間占有率の2倍の広告費が獲得できていることから、2倍の広告費の価値があると理解でき、広告費としては下落傾向にあるものの、プライマリーメディアとしての強みがあると考えられている。

雑誌業界が取り組むべき3つのポイント
「まず、今後、雑誌としては4C1Pというページベーストではなく、インプレッションを測定する新たなフレームワークを持ち、雑誌1インプレッションの価値(時間占有率に対する広告費)がその他メディアと比べて高いことが正当に評価されるように業界全体で向き合っていくべきと考えます。次に、ながら視聴が増えてきた時に、セカンダリーメディアで流れているものと、集中して見ている雑誌ではそもそもメディアとしての価値が異なるはず。雑誌には〝アテンション〞という強みがまだまだあるため、業界として〝アテンション〞という新しい指標を作り、プランニングのプラットフォームに適用されるような仕組みを作っていくことが必要です。最後に、雑誌の高いコンテンツ力(編集・企画・取材力)を、AIを活用して大量生成していくことで、編集タイアップが新しいメディアとなり、雑誌の魅力を高めることが可能と考えます」

クライアントも注目するMANGAへの期待
さらに、漫画市場の成長に期待を寄せている、とも。「特に若者へのエンゲージメントを強化したいクライアントが漫画やアニメには大変注目しています。我々も日本のIPを活用したビジネス展開を考えています」

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アメリカの雑誌広告市場における課題は日本においても同様で、「メジャーメント」「アテンション」「AI活用」について我々も注視すべきであろう。また「MANGA」が今後の盛り上げ役となることに期待したい。

日本雑誌広告協会 海外研修団派遣実績

実施年実施回日数訪問国訪問地主たる訪問先
2025第57回8日間アメリカ合衆国ニューヨークインターネット協議会(IAB)・電通アメリカ・Hearst Magazines USA・KODANSHA USA・Video Research USA
2024第56回8日間イギリス/ドイツロンドン/フランクフルト国際雑誌連合(FIPP)・PAMCo・Amplify・Teads・Hearst UK・Frankfurt Book Fair・CARLSEN
2019第55回8日間イギリス/ドイツロンドン/ベルリン英国雑誌協会(PPA)・TimeOut・PAMCo・YouTube・AxcelSpringer
2018第54回8日間イギリス/ドイツロンドン/ミュンヘン国際雑誌連合(FIPP)・英国雑誌協会(PPA)・DENIS・Economist・TI Media・Amplify・ドイツ雑誌協会(VDZ)・MediaGroupMedwith
2017第53回8日間アメリカ合衆国ニューヨーク米国雑誌協会(MPA)・インターネット協議会(IAB)・電通アメリカ・VIZEUM・MaCann Erikson New York・MaGarry Bowen ,LLC・The Economiist・Hearst Corporation・Conde Nast Publications・Time Inc・Rodale Inc.・IDG
2016第52回8日間アメリカ合衆国ニューヨーク米国雑誌協会(MPA)・電通アメリカ・VIZEUM・Meredith Corporation・Time Inc・Rodale Inc.・IDG
2015第51回8日間アメリカ合衆国ニューヨーク米国雑誌協会(MPA)・インターネット協議会(IAB)・VIZEUM・Hearst Magazine International・American Media Inc.・WINNER MEDIA LLC